DJ大塚広子が描くサムシンエルスとディブの世界

DJ大塚広子

80年代、日本で、産声をあげた、「somethin'else」と「DIW」。熱演された従来のレアグルーヴ・クラシック以降の音源にフォーカスし、エネルギッシュな演奏を集めたMIXです。90年代を中心とした当時の魅力を再発見できるストーリーをそれぞれのレーベルの特徴を生かして赤と青のイメージで組み上げました。

The pieces of somethin'else mixed by Hiroko Otsuka

The pieces of DIW mixed by Hiroko Otsuka

小川充

楽曲に深く感情移入ができ、その結果人間の喜怒哀楽の表情が出たミックス

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【雑誌「JAZZ JAPAN」16号掲載(11/24発売)より】

 ジャズやレア・グルーヴを中心に「黒いグルーヴのある音」をプレイする女性DJの大塚広子。全国各地のクラブ・イベントでのDJプレイやミックスCDのリリースで,その人気を年々拡大している。『ザ・ピーシズ・オブ DIW』と『ザ・ピーシズ・オブ・サムシンエルス』は,大塚広子がディスク・ユニオン傘下のレーベルで海外作品の国内配給から始まったディウ,EMI傘下でブルーノートの姉妹レーベルであるサムシンエルスの音源をそれぞれミックスしたものである。共に日本が世界に誇る本格ジャズ・レーベルで,国内外の大御所から新鋭まで幅広く扱い,メインストリームにフリー・ジャズ,ラテン・ジャズからアヴァンギャルドと柔軟なリリースを行っている。

「私はレア・グルーヴ出身ですが,その世界は1970年代頃の古い音源をプレイすることが多い。それはそれで面白いのですが,また違った新しいことにチャレンジしたいという気持ちもあり,今回は1980年代後半から1990年代以降の比較的新しい時代の作品を扱うこれら2つのレーベルのミックスCDを作りました。ディウは5年ほど前から個人的に興味があっていろいろと作品を集めていて,一方サムシンエルスについては,現在DJをしている六本木の"アルフィー"で馴染みのあるような日本人アーティストのリリースもあるので親近感がありました。これらレーベルの音は普段のDJセットでもかけることがあります。ジャケットのロゴにそれぞれ赤と青を使ったのですが,それが私にとっての各レーベル・カラーを象徴しています。ディウにはいろいろなタイプの作品があって,前衛的で面白いものも多いのですが,そうした中に感情や本能が湧きあがるような感覚がある。情熱的な赤というイメージですね。一方,サムシンエルスはメロディがしっかりしていて,スピード感やクールさ,清々しさのあるイメージ。ブルーノートの姉妹レーベルでもあるから青ですね」

 大塚広子は2010年に国産レーベルであるトリオの音源をミックスした『ザ・ピーシズ・オブ・トリオ・レコード』を発表した。そこにはジャズ・ファンク系の「踊れるジャズ」と共に,豊住芳三郎の作品や『インスピレーション&パワー14フリー・ジャズ・フェスティバル1』などフリー・ジャズや前衛的な流れも盛り込み,クラブ・ジャズともサロン・ジャズとも異なる新しいジャズの聴き方を提案していた。今回の2枚のミックスCDも,そうした大塚ならではの独自の世界観が投影されたものである。 「トリオのミックスCDで,フリー・ジャズやロフト・ジャズを今の若い人へ向けて提案したのですが,今回もその流れで来ているところはありますね。特にディウにはアート・アンサンブル・オブ・シカゴやサン・ラとかの作品があって,そうした前衛系の宝庫みたいなところもあります。それ以外にもカリビアンなもの,ロックと結びついたもの,ヒップホップに繋がる感覚のものと,本当に幅広いです。サムシンエルスの方は主流派のジャズが多いけれど,それも好きですよ。ラルフ・ピーターソンとか大好きですね。そうした好きなアーティストの作品をチョイスしていますが,一方で今回の制作を通して初めて出会った作品にも素晴らしいものがあり,ディウ編に入れたエリック・アレキサンダーをフィーチャーしたマイケル・ワイス・カルテットなどがそうですね」

 メインストリームにしろ,フリー・ジャズにしろ,従来のジャズ喫茶のような空間で聴くのと,大塚広子のようなスタイルのDJミックスで聴くのでは,大きな違いがある。聴き慣れた曲でも,DJの聴かせ方によってまた新たな発見があり,全く別の曲に聴こえてくることもある。
「アート・アンサンブル・オブ・シカゴの〈クシュ〉にはまるでテクノのようなパートもあって,そうした断片を広げてどう全体を構成していくか,というのがディウ編にはありますね。ミックスのアイデアから膨らんでいって,より冒険的なことにもチャレンジして作り込んでいきました。そうした中で私自身も楽曲に深く感情移入ができ,その結果人間の喜怒哀楽の表情が出たミックスになったのではないかと思います。サムシンエルスの方は1曲1曲をしっかり聴いてもらうことを念頭に置いてミックスしました。大西順子さんをフィーチャーした日野元彦さんのトリオ,日野皓正さんと菊地雅章さんの双頭クインテット,日野兄弟の共演に,皓正さんの息子さんの賢二さんが参加した作品が一連の流れの中にあったり,最後は《マウント・フジ・ジャズ・フェスティバル》でのゴンザロ・ルバルカバのライヴから,《モントルー・ジャズ・フェス》での大西さんのプレイに繋がっていますが,それは最初から狙って意図したものではありません。いい曲を繋げていったら自然とこうなった結果であって,そもそも作品の完成度が高いから,まず選曲ありきですね。普段のDJプレイに近いオーソドックスなスタイルです。ジャズが持つエネルギー,華やかさ,ライヴ感を楽しんでもらいたいと思います」。

『JAZZ JAPAN Vol.16』より

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菊田有一(DIW創設ディレクター)

このDJの感性で綴られたひとつの新たな作品

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【EMI ミュージック・ジャパン発刊「BLUE NOTE CLUB」 86号より】

このアーティスト(DJ)のプロフィールに関しては最後に記載してある通りだが、出会ったのは数年前、某ジャズ・リスナーズ・クラブだったと記憶する。それからしばらく経ち、2010年発売された『The Piece Of Trio Records 』のMIX CDを聞いた時、このDJの感性で綴られたひとつの新たな作品に出会った感じがした。それぞれの楽曲が集まり、ひとつの組曲として構成されており、いわゆるコンピレーション盤、ベスト盤といったたぐいのCDとは異なり非常に新鮮だった。

個人的に色々な方のDJ MIX CDは三桁以上の数量を購入し聞いてきたが、ひとつのレーベルの、しかもジャズ音源だけで構成された内容でこのように感じたのは初めてだった。

丁度、この時期にジャズ批評で20世紀CDコレクションの座談会を行方さんの呼びかけで実施され、1980年代後半から20世紀ラスト迄に録音されたジャズを再評価し特集として纏められた。その時、DIWのMIX CDを『TRIO』を作成したDJ大塚広子に打診した。併せてSomethin'elseと2種同時発売できるように、EMIの行方均さんにも賛同して貰った。それから丁度1年経過して、ようやく発売となったわけである。

この十数年DJの人達が構成したCD、レコードを聞いて結構、いやかなり影響を受けている。自身が持っているCDやレコードを再確認させられたし、新たに購入するレコードの範囲も色んな方向へ広がっている。DJが繰り出す音楽又はMIX CDにDJの感情や想像力を察知し共感できる部分が自分の音楽に対する見方、聞き方、音楽ソフトの購入方法にまで大きな影響を与え続けた。把握しきれない量の新作が登場している現在、DJが色々な曲、アーティスト、音楽を掘り続けている情熱に正直感謝したい。

『BLUE NOTE CLUB 86号』より

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The pieces of somethin'else mixed by Hiroko Otsuka

The pieces of somethin'else mixed by Hiroko Otsuka

1988年に東芝EMI(現EMIミュージック・ジャパン)が創設したブルーノート姉妹レーベル「somethin'else」。
ハード・ドライビングかつメロディック。若手からベテランまで、すべてフレッシュで真っ青な名演たち。


1. Enemy Within / Ralph Peterson Quintet
2. Siete Ocho / Bob Belden with Tim Hagans
3. Batista's Groove / Geri Allen
4. Us Three / Junko Onishi-Motohiko Hino Trio
5. Sliced Wild Potato / Terumasa Hino-Masabumi Kikuchi Quintet
6. The Cry / George Adams
7. Tribe / Terumasa Hino
8. Perspective / Seiji Tada Quartet
9. New Boots For Brooks / Hugh Lawson Trio
10. Monk's Plumb / Jack DeJohnette Special Edition
11. Tanganyika Dance (The Man From Tanganyika) / Kurt Elling And His Trio
12. Rites Of Passage / Jackie McLean Septet
13. Mother Wit / Geri Allen 14. Samba Dubois / Phil Woods
15. What Is This Thing Called Love / Rachelle Ferrell
16. No Name / Gonzalo Rubalcaba
17. The Jungular / Junko Onishi Trio
18. Conservation / Superblue

The pieces of DIW mixed by Hiroko Otsuka

The pieces of DIW mixed by Hiroko Otsuka

1984年に第一弾がリリースされたディスクユニオンの国内制作レーベル、DIW。
鋭くシリアスでなおかつ聴き手の生命力を高揚させる陽のパワー。
尖鋭派のアーティストから、ヒップホップやロックの波も取り入れた斬新な赤のドキュメント。


1. Building The Mid / Art Ensemble Of Chicago
2. The Beginning / Art Ensemble Of Chicago
3. Astro Black / Sun Ra Arkestra
4. Lover's Cool-Out / Jean-Paul Bourelly & The Bluwave Bandits
5. Sly / Jamaaladeen Tacuma 6.Quasi / Lester Bowie's Brass Fantasy
7. La Vie - The Jazz Life / David Murray Octet
8. Zombie / Art Ensemble Of Chicago
9. The Morlocks / Berlin Contemporary Jazz Orchestra
10. Kush / Art Ensemble Of Chicago
11. Exchange / Takeo Moriyama Quartet
12. Manhattan Safari / Richard Davis / Sir. Roland Hanna/ Frederick Waits
13. Mandela's Muse / Rodney Whitaker
14. Afro Logic / Ayibobo
15. Bahij / Vincent Chancey
16. Atlantis / Michael Weiss Quartet
17. Equipoise / Stanley Cowell Trio
18. One Bright Morning / M-Base Collective
19. RaboDeNude / Charlie Haden Liberation Music Orchestra
20. Raven Roc / Shannon Jackson & The Decoding Society

リリース関連イベント

alfie lounge ~2 title CD Pre-Release Night!!!~

DATE2011.11.22(tue祝前)
PLACE六本木 JAZZ HOUSE alfie
OPEN19:00 DJ START 20:00~
CHARGE1000yen
DJ大塚広子 / SHOW5ORIZINAL
GUEST TALK SHOWレーベルプロデューサー&編集長のスペシャル鼎談
行方均(EMI"somethin'else")×菊田有一(DISK UNION"DIW")×山本隆(JAZZPERSPECTIVE)

CHAMP"大塚広子NEW MIX CD RELEASE PARTY!!!"

DATE2011.11.25. (fri)
PLACE渋谷 The Room
OPEN22:00~
CHARGE2500yen(1D)
DJsYOSUKE TOMINAGA / OIBON / 大塚広子
四丁目(黒船音頭) / HICKEY(NATULAX RECORDS) / 中島雅人
SAXCHI3CHEE(THINK TANK)
FOODARATA

1日限定カレー店☆リリース感謝祭☆大塚広子の御当地カレーDig

DATE2011.12.4. (sun)
PLACE渋谷 無銘食堂
OPEN15:00~26:00
CHARGEFREE
MENUspecial curry!!
STAFF大塚広子 & Modern Times
MORE INFOリリース感謝祭☆
この日一日限りのカレーSHOPをOPENします。
カレー好きの大塚が全国各地のDJ招聘で出会ったご当地カレーを厳選し『11種類から選べる特別カレープレート』をご用意。
それらを引き立てるライスやナン、付け合わせ、ドリンクをModern Timesがプロデュースし提供いたします。
市場では入手困難な名店『神戸・サヴォイ』『福島・カレーダイニング笑夢』のカレーもご賞味いただけるスペシャルな1日。
当日はCD2タイトルの販売や特典もご用意。皆様のご来店を心よりお待ちしております。

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